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仙台高等裁判所 昭和54年(ネ)368号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】(関係人仮名)

本判決は、判文中にある最高裁48年に判決後の同判旨不適用事例である。

【判旨】

亡太郎と控訴人ハナ、同明、同秋子との間の養子縁組の無効確認を求める請求について

民法第七九五条本文が夫婦共同の縁組を要求しているのは、縁組により他人との間に新たな身分関係を創設することは夫婦相互の利害に影響を及ぼすものであるから、縁組にあたり夫婦の意思の一致を要求することが相当であるばかりでなく、夫婦の共同生活ないし夫婦を含む家庭の平和を維持し、さらには、養子となるべき者の福祉をはかるためにも、夫婦の双方についてひとしく相手方との間に親子関係を成立させることが適当であるとの配慮に基づくものであると解される。したがつて、夫婦につき縁組の成立、効力は通常一体として定められるべきであり、夫婦が共同して縁組をするものとして届出がなされたにかかわらず、その一方に縁組をする意思がなかつた場合には、夫婦共同の縁組を要求する右のような法の趣旨に反する事態を生ずるおそれがあるのであるから、このような縁組は、その夫婦が養親側である場合と養子側である場合とを問わず、原則として、縁組の意思のある他方の配偶者についても無効であるとしなければならない。

しかしながら、夫婦共同縁組の趣旨が前記のようなものであることに鑑みれば、夫婦の一方の意思に基づかない縁組の届出がなされた場合でも、その他方と相手方との間に単独でも親子関係を成立させる意思があり、かつ、そのような単独の親子関係を成立させることが、一方の配偶者の意思に反しその利益を害するものでなく、養親の家庭の平和を乱さず、養子の福祉をも害するおそれがないなど前記規定の趣旨にもとるものでないと認められる特段の事情が存する場合には、夫婦の各縁組の効力を共通に定める必要は失われるというべきであつて、縁組の意思を欠く当事者の縁組のみを無効とし、縁組の意思を有する他方の配偶者と相手方との間の縁組は有効に成立したものと認めることが妨げないものと解するのが相当である(最高裁判所昭和四七年(オ)第二〇九号昭和四八年四月一二日第一小法廷判決民集第二七巻第三号五〇〇頁参照)。

これを本件についてみるに、すでに認定したところによれば亡太郎には右控訴人らと単独でも縁組をする意思があり、かつ、亡太郎には控訴人正ほかの先妻ツナとの子があるばかりでなく、被控訴人との間に二名の子があるから、被控訴人の亡太郎に対する配偶者としての相続分は、控訴人ハナ、同明、同秋子と亡太郎との縁組により影響を受けることがなく、また、被控訴人と控訴人明、同秋子との間にはすでに姻族関係があり、控訴人ハナとは、同控訴人と亡太郎との縁組により、姻族関係が生ずるが、前認定の被控訴人の年令、境遇、家族関係に徴すると民法第八七七条第二項との関係において被控訴人に不利益を及ぼす事態の生ずることは予想されないし、右控訴人らはいずれも成人であるから、亡太郎との単独の縁組によりその福祉を害されるおそれがあるとも解されない。

しかしながら、亡太郎は、被控訴人と永年同居しながら、死期が近づくに及んで突如別居して単身控訴人ら方の家庭に入り、被控訴人方の家庭と控訴人ら方の家庭との間に紛争をまき起し、これに加えて若し、控訴人ハナ、同明、同秋子と亡太郎との間の養子縁組を有効とするならば、亡太郎の相続人である子が増加し、これにより被控訴人と亡太郎との間の子らの相続分が減少せしめられるに至ることは明らかであるから、ひいてはこれが被控訴人の意思に反し、かつ、被控訴人の家庭と控訴人らの家庭の円満を害する可能性を多分に含んでいることも明らかであるといわねばならぬ。

しからば、以上の認定を総合判断すれば、結局亡太郎と控訴人ハナ、同明、同秋子との間の縁組を有効とすべき特段の事情があるとまではいいがたいので、右縁組は、これを無効と解するほかはない。

(小木曾競 井野場秀臣 田口祐三)

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